賠償請求の違和感

株券の価値が700円から100円ぐらいに下がったため、株主は大きな損失を受けた。
その原因が会社側の不法な株価吊り上げによるものであるため、株主は損害賠償請求を行う権利がある。


どうもこの辺りの理屈に釈然としないものを感じていたのですが、
考えている内に疑問点がまとまってきたのでした。

  • 請求できるのは、「不法に」吊り上げた株価によって被った損失の部分だけと考えるべきなのでは。

つまり、会社側の責任は、粉飾決算等の不法行為によって上がったと認定できる額だけなのでは、と。
それが実際いくらなのかわかりませんが、今回500円以上下がった価格の内のせいぜい1〜2割程度なんじゃないかと。
法律的にどうかはよく知りませんが、理屈ではそうならないかなあと。

  • 株価を下げたのは株主自身であること。

株価は、株主が低い価格で株券を売ろうとした時に下がるわけです。
まあ、株主と言うよりは市場が下げたというべきですが、
片手で低い価格の売り注文を出しながら、「こんな値段で売らなければならなくなった、どうしてくれる」
と訴えるのは、どうも妙な構図に見えます。その値段で売りたくないなら売るなよ、と。


構図が妙になるのは、それらの株主が金儲けのために株を利用しているからなのですね。
それは株の本来の目的と異なるわけで、少しでも有利な方向に逃げようとしているから、行動に一貫性がなくなるわけです。

  • 株主はまだ損をしていない?

株主であるということは、お金を出して株券を買ったということです。
その時に使ったお金は、もう財布の中からは消えてなくなったものなのです。
将来的に株券を別の人に売るとすると、その時にお金が手に入るわけですが、
それは未来に売るとしたらの話で、今ある現実は何枚かの株券と、空の財布なのです。
その現実は、株価の暴落が起きる以前と起きた以降で、何の変化もありません。
株券の枚数が減ったわけではないのです。


これは本当に「損失」と言えるんだろうかと。
確かに金銭的な価値としては減っているのですが、本来的には株券はそういう見方をするものではないのでは。
逆に今の価格で株券を売りさばいたとして発生した損失は、売っちゃった人の責任が大きいのではないか、と。