平和で楽な暮らし

初めは、平和でも楽でもなかったから。
人にとってはまず、生き抜くことが第一の目的だった。
他の事に気を回したくても、命が絶えてはどうにもならないから、
まずは生活を安定させる事を押さえておかなければならなかった。


先人の努力があって、今は平和で楽になった。
生きようとしなくても、命が続いてしまうようになった。
生きる事が目的でなくなった。
そして、生きる目的を見失う人間が現れるようになった。
そのまま結論に至り、ただ目的が無いという理由で生を打ち切る人間も現れるようになった。


何だか、奇妙な事になってしまっているなと思う。
誰もが楽に生きられる事を切望していたはずなのに、
願いが叶ったと思ったら、それが原因で心を病んだり、自殺してしまう人もいたりする。
因果が全く逆転してしまっているような。
生存本能とやらは、一体どこに行ってしまっているのか。


平和で豊かな世界が理想郷だというのは、
無知で貧しい人間が思い描く空想上の楽園でしかないのかもしれない。


きっとまだ何か、見落としているポイントがあるのだ。