身内贔屓の構造

Amazonが140億円追徴課税を求められたという話題がある。
東京国税局が米 Amazon に 140 億円追徴課税 | スラド IT


これを読んでいて、思ったのだけれど。
まず、関連記事を読んで「Amazonが宜しくない事をしでかした」という印象を持つ人が多いのではないかと
思うのだけれど、私はこれは別に、Amazonが倫理に反するような部類の行動を行ったとは思わない。
いわゆる税金逃れを意図した行動ではあるだろうけど、税金逃れ等というものはどの企業だって
常に対応を検討しているものであろうと思う。払わずにすむ税金はそのまま利益となるのだから、
どのような業態で営業すれば支払う税金を最小にできるかを考えることは、企業としては自然な事だろう。
単にAmazon国税局の法解釈が異なっていたというだけの事であって、それは彼らで喧嘩して
落とし所を探してもらうだけの話であろうと思う。
もちろん日本国民としては、140億もの追加税収はありがたい物ではあるだろうけど。


で、まあ、実は以上のことは割とどうでも良くて、私が引っかかっているのは、以降に
述べることなのである。Amazonとは本来あまり関係の無い話である。
下記のような、ある投稿者のコメントがある。Amazonを利用するかという話題について

私は避けようと思いました。
理由は税金が日本に入る量が減るから。

税金が日本に入れば(ほんの少しかもしれないけど)私に還元されますが、
米国に入っても私にはまず還元されないでしょう。

まあ、そもそも、近所の店がつぶれないように通販はなるべく利用しないようにしてますがね。

このような考え方は理解できる。社会人たる消費者の意識として妥当なものであろうと思う。
これを批判する気は全く無いのだけれど、しかし私はこの意識は「身内贔屓」と同じ構造を
持ったものであるという事を考えてしまう。この身内贔屓は、以前から私が疑問視していたと
いうか、ないがしろにし難い考え方だよなあと思っているものなのである。


身内贔屓は、仲間内のみで利益を還流させようというシステムである。利益が外部に
流出するのをブロックしようというものである。
身内贔屓のわかりやすい例として、幾つか挙げる。

  • 縁故採用
  • 肉親同士の助け合い
  • 天下り
  • 政治と企業の癒着
  • ファン、フリーク、サポーター

これらは人間関係の構造と強く結びついているというか、そのものであるかもしれない。


ある投稿者のコメントに話を戻す。(このコメントが一般人(および私)の認識に近いと思い
引用しているだけで、投稿者個人に関して何か意見がある訳ではない)
コメントはつまり、日本が潤うように日本企業を利用しなさいと言っている。Amazonが企業体として
優秀かどうかに関わらず、である。もしかするとAmazonが潤えば、全世界が潤うかもしれない、
もしかすると、世界ではなく米国のみが潤うかもしれない。その点では、日本企業に利益を
回した方が、自分への利益還元率は高い。
が、しかし。その意識は前述した身内贔屓というものではないか、と思うのだ。
本来なら、より公正な態度で消費活動を行いたいと考えるのであれば、利用するサービスの
選択に、身内贔屓の要因を絡めるべきではないのではないか。


何もそんな小難しく考えなくても、と言われるかも知れないのだけれど、これは、
私にとっては結構重要なことなのである。軽く触れたように「天下り」「政治と企業の癒着」等も
突き詰めればそういった、罪の意識の無い「身内贔屓」的な発想から生まれるものだと私は
考えるため、それを否定するのであれば「日本企業だから」等という判断基準も排除するべきだと
思うのである。


とはいうものの。
これはとても微妙な問題で、全部ひっくるめて一概に論じるという事ができず、どう考えるのが
妥当なのかは今のところ結論が見えていない。
「日本なんて枠に拘っちゃダメだ」と考えて、何でもオープンに、ブロック完全排除等と
無節操にやっていけば、冗談じゃない状況まで国内の利益は海外に流出(拡散)することになる。
それでいいのかと言われると「それでいいんです!」という気持ちと「そりゃまずいわね」
という気持ちと両方あり、何というか、何とも言い難いのである。