煙草

タバコが、嫌いである。


歩きタバコと、禁煙タイムに吸っている人々が、殊更に鬱陶しい。
油断しているとうっかり蹴りを入れてしまいそうで、非常に危険だ。


喫煙の習慣があるからといって、既に知り合っている人の評価が下がったり、
新たにタバコを吸い始めた人を嫌いになったりということはないのだけれど、
何の面識もない赤の他人の喫煙者に対しては、かなりの敵意を持っている。
一度でも会話し、別に性格に問題のない人間と感じれば、その敵意は消滅するのだけれど。


一方で。
タバコを吸っている人間の絵というのは、格好いいとも感じる。
腰の落ち着いた、自己を確立し、語るものを持っているような、人生を心得た大人のような、
それでいて虚無的で破滅的な雰囲気が漂っていて、男女問わず絵になるものがある。
ために喫煙者に対する印象は悪いものとは限らない、けれども。


しかし、筒の先から出ている煙は、毒の煙である。
己の寿命を縮めるだけなら、まだ許す。しかし実際は、周囲で生活する人間の命を着実に冒している。
女の喫煙は、子供にも影響を与える。養育中も吸い続けるならなおさらである。
煙草が放つ悪臭は、喫煙者当人は気付かないかも知れないが、非喫煙者には耐え難いものがある。


そもそも、こんなものが法的に認可されていることが、自分には不満である。
既存の喫煙者から吸う権利を奪おうという気はないけれども、なぜ毒物でしか無いものを国民に許しているのか。
命を縮めるものと判っているのなら、新たな喫煙者を生まないような政策を執るべきではないのか。
まあ現実には、むしろ国民から反発が起こるのだろうけれど。


父の血筋は、何だか寿命が短い。
兄弟のほぼ全員が60前に亡くなっており、いずれも喫煙の習慣があったようだ。
やはり父も、煙草を吸う。
いまさら止めるよう言っても、とは思うのだけれど。