浦沢の人について

このえんとりは、浦沢直樹さんをけちょんけちょんにこくひょうするので、
ファンのひとはよまないでください。


諸事情で、20世紀少年の映画を観てきました。第2部を。第1部を観ていないのにです。
ただ、急遽決定した予定とはいえ、事前に原作の4巻までは読む事ができました。
私は元々、浦沢直樹氏の漫画には少々抵抗を感じていて、20世紀少年(漫画)については
タイトルは面白そうだなと思いつつも、内容にはタッチしていませんでした。
4巻までを読んだ感想としては、「あ〜、MONSTERと似た傾向か…」と。
まあしかしその時点では、映画についてはそれなりに楽しみにしてはいました。
邦画の大作と言えば、駄作や大味なものになりやすいものというイメージがありますから、
まあ、面白ければ儲けもの。第1部すっ飛ばしという現実もありますし、多分あまり
楽しめないだろうなとは思っていました。さほど楽しめない程度に時間潰しには
まあなるだろうと、そんな感じの心持ちであったわけです。


で、実際映画の方はどうであったかというと。
もう、後半は帰りたかったです。「いつまで続くんだコレ…」みたいな。
…。
映画の失敗の理由はいろいろあると思いますが、私が思ったのは、
もうこれは企画の段階で失敗しているなということで。
あの長い原作を、映画3部作程度で全体を語ろうという試みがそもそも間違っていると。
コレを観た後、ハリウッド版ドラゴンボールの製作姿勢はむしろ正しいんだと思うようになりました。


さて、漫画の話です。
私は「浦沢直樹氏の漫画には少々抵抗を感じていて」とか言いながら、YAWARA! は全巻読んでいたり、
MONSTERのアニメ版は全部見ていたりと、中々のツンデレっぷりを発揮していたりします。
ただ! YAWARA!はむしろ、いい漫画だと思います。読んだのは結構昔なので今読むとどう感じるか
判らない部分はありますが、軽いテイストで楽しくまとめた、バランスの良い作品であったと思います。


問題は、MONSTERです。
まあこちらは漫画版をロクに読んでない身分で非難するのもどうかってのはあるんですが、
わりと継続的に思っていた事なので、まあその思いをテキストに落としておこうかなと。


えー、まずですね。
コレが漫画としてダメか、と言われると、すごくダメって程ダメではないと思います。
ただ私の基準で言うと、良作の部類には入らんだろうと思うわけです。
この漫画は、長編の構成に耐えられていません。何だか飯の種として描かれただけの
ストーリーのように感じました。
これは競争の激しい隔週漫画雑誌に連載されていたことによる影響があると思いますが、
初期〜中期〜を描いていく中で、物語をどのように終わらせるかという着地点の見通しが感じられないのです。
人気が無かったら短く終わる予定だったが、人気が出たのでもう少し続くようにした。
まだ人気が続くようなので、まだ話が続くようにした。人気が無くならないので、もう少し様子を
見る事にした。その連続で作られているように見えました。私には。


とはいえ、YAWARA!もそういう傾向はあります。しかしそれでも、そっちは大丈夫なのです。
元々軽いテイストであれば、読者は綿密で重厚な展開を求めたりはしません。また、YAWARA!の方は
定期的に大会があったり、主人公が次のステージに進んだりと、適切なマイルストーンがあり、
何て言うの、カタルシス?読者はそれを得る事ができます。これは漫画としては普通の事で、かつ必要なものです。
MONSTERは、あまりに同じ話を引っ張りすぎている上、中盤は本筋を語るに必要ないと思われるような
派生展開で物語を太らせているため、強い中だるみ感があります。こういった点は、漫画に限らず
ストーリーを題材にした作品の評価を大きく下げるものだと思います。
この中だるみを防ぐために先に挙げたマイルストーン的手法があるのですが、浦沢氏はMONSTERで
これをやらなかったわけです。多分やりたくなかったんだと思います。1つのテーマで1作品を
終わらせたかったのだと思います。しかしそのために、物語としては失敗しました。
また、中だるみ感が強調されてしまったのは、単純に漫画家の力不足の面もあると思います。
「このまま続くとヤバいな」と感じた時点で、物語の終結を編集者と交渉するべきだと思いますし、
終結を却下されたら、1テーマ1作品を諦める決断をするか、さもなくば質が劣化しないような
超漫画力を発揮して乗り切るかしなければならないのです。
「このまま続くとヤバいな」とすら感じなかったのだとすれば、漫画家としては全然ダメです。


DEATH NOTEって漫画がありますが、あれはかなり凄い漫画だと思います。
あのレベルの漫画がちょっと一過性のブームで終了してしまう辺り、日本の漫画供給過多の現状に
一種の恐れを感じてしまったりもします。
DEATH NOTEはよく12巻で終わらせたなあと思います。ジャンプなのに。
こちらの作品も終始順調というわけではなく、Lの人が一度負けた時点で、「引き延ばしなのでは」
という印象を受けはするのですが、その消化が上手で、最終的には最後のシーンまで
一続きのストーリーであるという感想を抱く事ができます。
あれがもうギリギリで、あれ以上続けるとアウトだったと思いますが、スーパー漫画家なら
読者に納得感を持たせたまま、さらに6巻ぐらい続ける事ができるのかもしれません。


まあ、漫画としての質が下がっても、売れるんならいいんじゃねって話もあると思いますが、
別に本人がいいんじゃねって思ってるなら確かにそれで良くて、私が浦沢氏の漫画に興味を
持たないというただそれだけで万事解決する問題ではあるのですが。
ただそれでも何か言いたくなるのは、私があまり面白いとは思えない漫画が沢山売れてしまう
という現実に釈然としないものを感じたりするという事情があったりするわけで。


そういうわけでMONSTERの私の評価は低く、そして20世紀少年を4巻まで読んだところでも、
やはりどうも伏線張りたがりの解決先送りので抑揚感に欠け、これから面白くなるかも知れないけど
何とも言えないなあという感じであったわけです。
どうも浦沢氏は、良くない方向に進化してしまった気がします。読者の気を引くような小手先の
人気獲得法に長けてしまって、彼自身が本当に何を描きたいのかがどうもよく見えません。
実は雑誌の編集部がそのように彼を育ててしまったのでは…という不安が、少しあります。
MONSTERでは、エヴァやルンゲ警部が個人的に好きなキャラクターで、こういうキャラクターを
描けるのであれば、氏はやはりそこそこの使い手ではあるのだろうと私は思うのですが。


一度、5巻ぐらいの内容で完結する彼の漫画を読んでみたいなあと思います。そして
もしその漫画の内容が面白くないようであれば、もう彼の漫画には期待できないな、と思うわけです。


さて、ちょっとノリノリで書きすぎたかな! 誰かに怒られないか心配だぜ。