徴兵制とお客様根性など

日本には徴兵制度が無いわけです。これは面倒くさがりの私には大変ありがたい事です。


徴兵制というのは、基本的には軍事力の維持を目的とした制度なのですが、別の側面として、
負担は大きいが誰かが担当しなければならないような役回りを国民全員で分担しよう、
そういう意図も含んでいるわけです。任意参加にすればその分報酬は多めに支払う必要が
あるでしょうし、金さえあれば身を危険に晒さずに済むという考え方も、あまり好ましい
ものではないわけです。


兵士と言えば戦争の実働員なわけですが、日本の自衛隊員が戦争をしているかと言えば、
そんな事はないわけです。じゃあ戦争のための訓練のみで他に何もしないのかと言えば、
そんな事はないわけです。つまり自衛隊には軍事に直接関わらない分野の仕事つまり、
兵器を携行せずとも務まるような作業を担当している場合があるわけです。


何が言いたいのかというと、非軍事目的の徴兵制であれば、日本でも受け入れられうる
のではないか、と。「徴兵制」等というとあまりに物々しいのですが、一定期間かあるいは
単発的な社会奉仕活動(国家的に誰かがやらなければならない類のもの)を、国民の
義務として課すという制度は、アリなんじゃないかと。


いや、やりたくないけどね、自分は。
そんな事を思ったのは何でかというと、アレだな。以下に書くような事を最近思っていたわけで。


最近どうも「(税)金を払ってるんだから、こっちの納得するように働くのが当然だろ」という
考え方の人が結構いるんじゃないかと。


コミケの事はあんまよく知らないのですが、昔聞いた話で印象に残ってる事があって。
同人というのはそもそも、同じ趣味を持つ者同士で互いの作品を発表し合う集まりで
あったわけですね。で、作品に対して払われるお金というのは、主に謝礼や活動の応援資金としての
ものであって、作品を商品として売っているわけでは無いわけです。
ところが集まりが巨大化するに従って、そういう文化に対して無知な人間までが
集まるようになり、完全に「お客様」の発想で値段相応でない事を非難したり、企業の商品のような
サポートを求めたり、創作意欲を失わせるような態度をとる者が増えてきたと。


鉄道の駅員に対して普通以上に丁寧な対応を求める事を「お客様だから当然」という発想で
考えているとか、公務員に対して「税金で給料貰ってるんだろうが」という発想で偉ぶったり、
何かどうも酷い勘違いをしている人がいるんだよなあと思うのです。
お客様が神様なのは、そもそもが商人側から発せられる戒めのための意識であって、物の売買において
価格を自由に決められる有利な立場の商人が、傲慢にならないための戒めとして(実際競合相手が
現れれば、嫌な商人からものを買うのは避けるようになるわけだから)お客様を神様のごとく丁寧に
対応しなさいと。ある種のサービス精神から為される行いであって。
駅員に本音を言わせれば「この対応で不満なら今後鉄道をご利用されずとも結構です」であり、
それ以上の対応は善意による無料サービスなのに、10円でも払えば払った方が絶対的に偉いと
思っている人間がいます。


政治でもそうなのですが、税金さえ払えば後はそれを扱う人間が全て我々のために上手く
使ってくれるのが当然みたいな論調が強いですが
…納税は国民の義務であって、払うのが当然と憲法で決められている物です。
それは日本人みんなが相応に負担していて、偉い事でもなんでもないのです。
政治家や役人はそれとは別の流れで人選がなされていて、役人を雇う仕組みを作るのが
政治家で、政治家を選んだり、政治家になったりするのが国民なので、現状のやり方に
不満があるのなら、政治の世界に自ら乗り込むのが本筋です。


つまり、金を払っているだけの事ででかい顔しすぎだと。
金持ちが金を出すだけで偉そうにしているのを見るのも腹立たしいですが、
金持ちですらない人間がはした金で偉そうにしているのはさらに腹立たしい上に滑稽です。


それでまあ、そういえば徴兵制の話だったねと。
自ら体を動かす事により、労働の尊さを知りなさいと。他人に苦労を押し付けている現実を
知りなさいと。
…なんかちょっと論理が噛み合ってないな。