被害者家族にとっての死刑

名古屋の闇サイト殺人事件、2人が死刑、1人が無期懲役になったニュースを見ていて、いろいろ思った。


無期の被告に対して、事実上の首謀者なのに自首したからといって死刑を免れるのはおかしい、という意見が
あったのだけれど、まあでも、自首はやはり重く考えざるを得ないよなと私は思う。
自首した人間まで死刑にしてしまうと「自首をしても罪は軽くならない」という認識が広がってしまい、
犯罪者にとっての自首のメリットが完全に無くなってしまう。今後の事を考えるとそれはまずいだろう。


被害者の母親は、全員の死刑を望んでいるという。死刑を求める署名活動も行っていたようだ。
まあ、やるのは自由だけれども。
私個人としても彼らが死ぬ事はまあ構わないっちゃ構わない。知らない人だし。
………。
ただ、彼らが死刑になったところで、この母親は救われないんだよな、と思う。たぶんね。
この母親が彼らを「憎んで」いる限り、心に平安が訪れる事は無く、それは彼らが死ぬ事では多分解決しない。
娘を喪っているから、元の状態に戻る事はなく、被害者の命は全く無駄に奪われただけで、意味をなす事はない。


母親の心の平安を得るのに、今から取れる最も現実的な方法は、母親自身が本心から犯人を赦す事だ。
じゃあそれができるかっつうと、そうそうできるわけがない。できるわけがないのだが、しかしそれができなければ、
母親の苦しみは消えないのである。犯人を死に追いやったところで、その虚しさを思い知らされるだけだろう。


それで、私は思うんだが。
被害者の家族が、犯人を許せないのは当然であって、それは仕方がない。
で、そこは、家族よりは一歩引いた位置にある周囲の人間が理性を持たなければならない所で。
被害者遺族が犯人を許せるように、その手助けをしてやらなければいけないのではないかと思うのだ。
被害者遺族に人の道を諭す牧師をつけるだとか、犯罪者が悔い改める気持ちに至るような教育プログラムだとか、
見ず知らずの人間から心のこもった慰めのメッセージが届くであるとか、警察のトップが治安の至らなさを詫びるであるとか、
国民全員が不完全な社会の構成員の一員として詫びるであるとか、なぜ犯人が赤の他人を殺すような
人間になってしまったのかのルーツを探って一定の納得を与えるであるとか、
↑いや超適当に並べてるけど、システムにしても人の考え方にしても、もう少し被害者遺族の為に被害者遺族の心の傷を
和らげるようなアクションが取られるようになって欲しいなと思うわけで。


現実はどうかというと、周囲の人間まで調子に乗って「死刑、死刑」って騒ぎ立てて、この人達何も考えてないんだねと。
それあんたが個人的な感情で死刑にしたい(てゆうか殺したい)だけやん。と。
被害者遺族の為になる事ってそういう事なの?と、彼らのためを思って言っている?
んー、その発想はいただけないね、ボクとしては。とか思うわけです。


「死刑にして欲しい」なんて、安易に言うもんじゃないと思う。(自分も言いそうだけど)
無責任に合法的に殺人を楽しめる、そんな意識が隅っこに隠れている気がして、危険な発想だなと思う。
「許し難い」から死刑なんて、そんなシンプルにまとめないでよ。人を殺す理由を。