不況

討論番組なんかで、「不況を脱するためにはどうすればよいか」等という話を見たりするのだけれど、
私はどうも、そういう考え方にはずっと違和感を持ち続けている。
好況にさえなれば、今発生している多くの問題が自動的に解決するかのように語られているけれど、
なんかこう、好況というものに幻想を持ちすぎていないか。実際数年前まで、景気は回復していたと
言われているけれど、その時期は日本のみんなは幸せであったのだろうか。


不況による解り易い弊害は、就職難だろう。好況になれば確かにこの問題は縮小されるかもしれないのだけれど。
しかし根本的に考えて、就職難は好況によって自然解決されるのが正しい解なのか?違うんじゃないの?
この点については、私はいつも心に引っ掛かりを感じている。就職できないのは、要は雇用にあぶれた人達は
その時点で必要とされていない人材だという事だ。その問題を、好況により本質的には無用な雇用を
発生させる事で解決を図るというのは、非常に無駄な事だと思ってしまう。
仕事がないなら、働かなくてもいいじゃないか、と私は思う。働かなくても生きていけるように、生活保護
力を入れるべきなのでは。働いていないのだから多少の不自由は受け容れて貰い、低コストで無職の人間を
維持できるような生活基盤を用意するといった事はできないのか。(例えば生活しやすい刑務所のようなもの)
そういう対応は、好不況に関係なく必要なのではないか。


不況下でも儲かっている企業というものがある。それらの企業は概ね、消費者が真に求めるものを提供できている
から売り上げを伸ばせているという事のようだ。つまり、不況下でも必要なものは売れる。
不況でものが売れないのは、それが必要とされていないからではないのか。つまり問題は、いかにして魅力的な、
消費者の気を引く商品を創り出すかという事であって、好況になるのをただ待っているという考え方は
全然ダメなんじゃないか。無用な商品は、好況になったところで売れ行きは高が知れている。好況になれば
出費も多くなるのだし、そんな状態で好況が我々を救ってくれる事を本当に期待できるのか。


…という感じに、私は好不況というものをあまり信じていない。
そもそも20世紀バブル期の様な日本の繁栄は、他国から利益を搾取して生まれたものではないかと私は漠然と感じている。
他国の商品開発力が増大してきた昨今において、日本製品の海外での力が相対的に弱くなり、
徐々に利益を独占できない形となってくるのは当然の流れだと思う。当然貧しくもなるだろう。
日本の生活水準は、今時点で十分悪くないものだと思うし、これ以上に派手な生活は今後は望めないと思うのだ。
であれば、今の水準を落とさない事と、生活が苦しい人にモノを分配してやるのが今必要な事で、
単なる数値上の景気に気を回してばかりいるのは、私はやはり理解できない気持ちがある。